「なぜ国語を学ぶのか」(村上慎一)

受け身で読んではいけない一冊

「なぜ国語を学ぶのか」
(村上慎一)岩波ジュニア新書

日本人として生まれ育って、
日本語を話せない人はまずいません。
母国語として何の不自由もなく
使っている「国語」。
なぜそれを勉強するのか。
誰しもが一度は感じる
疑問なのではないでしょうか。

中学生を見ても、家庭学習として
「国語」は勉強していません。
せいぜい漢字練習くらいでしょうか。
私は自分の担当教科である理科よりも、
国語の学習を大切にするよう
子どもたちには説明しています。
しかし返ってくるのは
「何で国語を勉強するの?」
「どうやって学習するの?」。
返答に困っていたとき、
本書に出会いました。

どれどれ、
どんなことが書かれてあるのだろう。
興味津々でページをめくりました。
何、「自分で考えてください。」
えっ、何これ!?
そうです。受け身で読んでは
いけない一冊なのです。

本書の特徴の第一は、
相談に訪れる生徒と
国語教師との会話から
成り立っているという点です。
国語を学ぶ意味を、
教師と生徒がともに考えていくという
設定になっています。
一方的に価値を押しつけるのではなく、
学ぶ意味・意義について、
この本をきっかけに
読者自身に考えてもらいたいという
筆者のスタンスが
とてもよく現れています。

第二は、
評論、小説、随筆、詩、古典、作文と、
内容が系統的に構成されている点です。
それぞれの分野ならではの
学習の意義と進め方の方向性が
示されています。
理路整然とした内容構成は、
説得力があります。

そして第三は、
本書のいたるところに
文学作品が例示されていて、
それが読書案内の機能を
持っているという点です。
私は読書が国語学習の
(というよりもすべての学習の)
第一歩と考えています。
その点でも、本書は国語学習の
適切な指南書と言えるでしょう。

いよいよ小学校での
英語授業が始まりました。
その反面、国語の授業時間は
削減される傾向にあります。
もしかしたら子どもたち以上に、
この国の大人たち
(文科省の役人たち?)の方が、
国語を学ぶ意義を
理解できていないのかも知れません。

中学校3年生、そして高校生に
ぜひ読んで欲しいと願っています。
そして大人のみなさんにも
ぜひ読んでほしいと思います。
受け身ではなく、
自分の頭でしっかり考えながら。

(2019.7.22)

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